原発に関しての様々なウソについて

 福島第一原発の事故に関連してテレビやネットで毎日のように情報が流されています。原発が必要かどうかは、事実を踏まえて客観的に判断しなければならず、そこに何らかの意図を含んだウソは入り込んではいけません。私自身は原発は必要であると考えており、そのことについては当ブログで何らかの言及が必要と考えていましたが、排害社の金友氏の4月23日のブログを拝見したところ、原発の必要性について多角的な視点で簡潔にまとめており、これを読めば十分と言えるほど実に良くできた文章だったので関心してしまいました。
是非ご一読願いたい。
http://haigai.exblog.jp/13442605/
 そこで、同じことをここで書いても仕方がないので、前述のテレビやネットで流されている情報について、どのようなウソがあるかを1つ1つ検証してみましょう。


1.福島第一原発の事故については東京電力に一義的に責任がある。
⇒当たり前と思われるかもしれないが、そうではない。原子力の世界は特殊であり、国の規制でがんじがらめとなっており、国(原子力安全保安院原子力安全委員会)に多くの責任がある。原発は設置許可、工事計画の認可、使用前検査、保安規定の認可といった多くの段階規制全てを満足して初めて運開させることができるものであり、福島第一原発もそのようにして国の厳しい規制を通ってきていて、少なくとも現時点で明らかになっている事実の中に東電が法律に反することを行ったということは何もない。今回の事故の原因となった津波について、まともな審査を行ってこなかった国に重大な責任があると考える。何しろ、地震に関しては工事計画の認可において、分厚いファイルの耐震計算書を提出させている筈だが、津波に関してはせいぜい1頁分の説明書で終わりだろう。
 今回の津波は千年に1度起きるかどうかの想定外の大津波だったというが、原発の寿命が60年であることを考えると、その期間中に6%の確率で起きるということではないか。設計用限界地震が実際には起きないと考えられているのに対し、6%というのは無視できない確率だと思うが、これでは片手落ちの審査だと言われても仕方がない。


2.原発震度7地震で壊れる。
⇒壊れるというのがどういう壊れ方を意味しているのか分からないが、少なくとも原子炉自体やその安全に関わる設備は、今回問題となったディーゼル発電機も含め、壊れることはない。これらは、その地域で起きうる最大限の地震(設計用限界地震)でも壊れないようになっており、今回の地震も当然それを超えるものではなく、津波が来るまではこれら設備の機能は維持され、外部電源を喪失しながらも、ディーゼル発電機が自動起動して非常用電源が供給され、原子炉緊急停止系も自動的に作動して原子炉が停止、さらに非常用炉心冷却系が作動して残留熱を除去し、いわゆる冷温停止状態に移行していた。
 それ以外の原子炉の安全に関わらない設備は壊れた可能性はあるが、建屋が爆発したり、火災でボロボロになってしまった今となっては、地震で壊れたかどうか確認のしようがないだろう。しかし、現在、冷温停止している福島第1の5,6号機、福島第2の全機及び女川の全機も安全に関わらない設備に壊れているものもあるだろうが、放射性物質の放出はない。このように原発の設備はその重要度に応じて耐震設計がなされており、壊れてよいものはそれなりの設計となっており、実際に壊れても何も問題ない。


3.東電が電力の自由化に反対し、自然エネルギーの普及を妨害している。
⇒電力の自由化がどういう自由化を意味しているのか分からないが、発電設備は必要な許認可を受ければ誰でも自由に作り、売電することもできる。家庭用太陽電池に至っては許認可が全く不要なだけでなく、この出力の不安定な極めて低品質な電力を電力会社が50円/kWhという法外な値段(火力、原子力等の他の発電方式は10円/kWh未満)で買い取ってくれており、妨害どころか熱心に協力している。もちろん電力会社がボランティアでこんなことをやっている筈もなく、この分はしっかり電気代に付加され、太陽電池を持っていない人がいずれ負担することになる。


4.太陽電池は大量生産すれば価格もどんどん安くなる。
⇒かなり前からこんなことを聞いている気がするが、今はもう大量生産しているのではないか。にもかかわらず、ここ数年殆ど安くなっていない。なかなか安くならないのは原材料費が高いか、生産するのに多量のエネルギーを消費しているかのいずれかである。さらに生産量を増やせば原材料が需要増加で高騰するだろうし、多量のエネルギーが必要だとすれば、量産効果は期待できないし、そもそも環境に悪い。したがって、今後も大幅に価格が安くなるとは考えにくい。


5.原発も発電するのに大きなエネルギーを必要とする。
⇒全くのウソ。原発の発電量当たりに必要なエネルギーは非常に少ない。ウラン235を濃縮するのに大量の電力を必要としていると言いたいのだろうが、そもそも僅かな量のウラン燃料で他の化石燃料とは桁違いのエネルギーを発生するので、ウラン濃縮するのに必要なエネルギーが多くとも、発電量当たりで見れば無視できる。


6.プルトニウムは猛毒で極微量の微粒子を吸入しただけで死亡する。
⇒いわゆるホットパーティクル論というものだが、これは実際に米国の核兵器工場の事故等でプルトニウム粉末を吸入した作業員が数百名かいるが、肺がんで死亡した人数が通常と比べて特に多くはなかったので、これは現在では否定されている。また、酸化プルトニウムは水に溶けないので、体内に吸収されにくく、蓄積することもないので、他の放射性物質と同様、体外に排出されるまでの被ばく線量を考えればよい。もちろん重金属としての化学的毒性はあるだろうが、それ以上でもそれ以下でもない。


 とりあえず、思いついたものを書いてみましたが、他にもいろいろあるでしょう。これらのウソの多くは、キチガイ左翼でプロ市民の反原発派がビジネスのために広めてきたもので、そのことの善悪はともかく、金儲けという目的のためという連中の立場から見れば合理性を持ったものとも言えます。しかし、保守を表する者の中にこんなものを真に受けてテレビやネット等のメディアで同じことを言って原発を批判する者がいるのは本当に情けないことです。反原発派も内心「バカめ」と思っていることでしょう。
 また、ネットを見ると狂ったように東電を批判している人がいます。確かに東電は地域独占の企業で、傲慢なところもあり、従業員の給与もかなり高いので批判したくなる気持ちも分かります。しかし、前述のとおり、責任の多くは国にあります。非常に厳しい段階規制による長期間の審査で建設費を上昇させ、非常に多くの検査項目による長期間の定期検査で稼働率を下げさせて電力会社に多くの負担を強いておきながら、肝心なところがすっぽり抜けていた結果、チェルノブイリに次ぐ大事故を引き起こしたのです。反原発派やマスゴミのばかばかしい批判に耳を傾け、耐震基準の強化ばかりを求めてきた規制当局は自らの無能さを真摯に反省する必要があります。しかし、経験にすら学ばない愚者以下である彼らは反省もせず、また同じことを繰り返し、更なる耐震基準の強化を求めてくることでしょう。
 何か東電を庇うような説明になりましたが、これは民主党政権が自らの不手際や本来、国の責任であることも全て東電のせいにして悪者の代表にでっち上げ、批判の矛先をそちらに向けさせることで政権の支持率を上げようという、あの事業仕分けと同じ構図が見られるため、このまま何も書かないでいることはできませんでした。東電の対応で批判すべきは批判しなければなりませんが、民主党のこのような浅ましい策略にまんまと乗せられて東電叩きをするのは愚の骨頂です。